菅浩江『そばかすのフィギュア』

前の『五人姉妹』と一緒に神保町ブックフェスで買ったサイン入り本。
やっぱなんていうか色彩とか、そういう繊細なところだよね。とにかくサクサク読めるのはありがたい。
こう思いが届いてない微妙な心みたいのがたくさん書いてあって、切ない短編が多いね。

菅浩江『五人姉妹』

表題の「五人姉妹」はかなり好き。女性作家久々に読むってのもあるけど、まさに女性らしい感性を叩きつけられたような、そういう清々しさ。
SFなんだけど、SFと人間との関わりというか、SFは舞台装置だったりする程度。舞台装置を組んだその後をしっかり見据えて、そこからの人間が丁寧に描かれてる感じが良かった。
「ホールド・ミー・タイト」での三十女の悶々とした恋愛に対する奥手な描写は草食系男子のそれにロマンチズムを加えたようなもので、ちょっと親近感が湧くと共に読んでてこっちが恥ずかしくなったという。

水見稜『マインド・イーター』

89年の本の復刊。にしては全く時代を感じないのがすごい。
クトゥルフ的な宇宙的恐怖と、それにSF的思考実験が織り交ざっていろんなイメージが渦巻いていた印象。設定それ自体とそこから派生した物語。とにかくおもしろすぎる。たぶんまた何度でも読めるスルメ本としても優秀。もちろん初見のインパクトも最高だけど。
なにより飛浩隆さんの解説が強烈。解説だけとっても読む価値があるくらいに鋭く切り込んだ文章。
短編の中では最後の「迷宮」が気に入っている。それまでさんざんM・Eに無力感をつきつけられてきた人間が、最後にその強度を示している(と同時に人間の可能性とその限界を示すような)終わり方は感動した。それとコンピューター「サラ」と「ネイラ」との機械的でありながらしかし人間以上の熱を感じるやり取り。「サラ」が最後にケインの遺伝情報を送ってくるくだりは文章ではあえてサラリと描写されているものの、そこにとてつもないテンションがあるように思えた。

飛浩隆『グラン・ヴァカンス』新城カズマ『サマー/タイム/トラベラー』とともに人に薦めたい本にランクイン。

少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録

見た。TV版を一気に見た流れで。
もうなんかいろいろな既成概念がぶっ壊されたような気がして怖い。あまり影響されすぎるのも癪なのでがんばって嵐のような勢いに負けないように自分の価値観を保持するのが精一杯という始末。天才の仕事は怖い。
ウテナを通過してしまったことでこれから色々見ていくにあたっての気概が変わってしまうようで困る。そもそも最近アニメだったりマンガだったり本を読むにあたって、野暮なツッコミを嫌う傾向にあった。その作品が作品たりえているような要素して昇華しきれてさえいればどんなクソみたいなことでも面白さの1つとして捉えていたので、よりその傾向が加速しそうで困る。懐が深くなったといえば聞こえはいいけども、どうも違う気がしてならない。
月並みな感想を言うと、ミッキーの「樹里先輩は一体何を言ってるんだ・・・?冬芽って誰だ!?」のシーンが最高に好きです。

上遠野浩平『ヴァルプルギスの後悔その4』

例のとおりその4ではなくて、Fire4.なんですが。っていうか「かどのこうへい」って打ってGoogleIMEさんに華麗にスルーされたのがものすごく不満。かどのこうへいを一発で変換できなくて何のためのGoogleIMEだよって思った。ううううう・・・
最後の方に最高に面白い中二病的セリフがあったのでものすごく満足しました。やっぱりブギーポップはサイコー。何の本でもとりあえず読むって大事だなって思った。話のネタにはなる。ということでより着実にネタにするため面白かったセリフを載せて感想終わり。

「そう――記憶は残っていない……だからこれは未来から来た"誘導" ――私にはエンブリオによって覚醒させられた力が未整理のまま放置されている。これはきっと、そっちの方から来ている……未来の私が、今の私をこれに導いたんだわ……この<生滅の指輪>へと」

秋山瑞人『DRAGON BUSTER 02』

まさか。新刊が出るとは。その一言で感想文終わらせたい。
やっぱり秋山さんの文章がただのラノベ書きのそれとは一線を画する、どこがと言われるとなんとも言えないんだが、やはり雰囲気が異常。キャラ描写がありえないくらいの臨場感。素敵過ぎる。
端々で挟まる伝承やら街の歴史らしき記述がおかしいくらいの精密さを持って読んでる俺の心に突き刺さる。
ただ、何よりいいたいことは一つで。
早く新刊出して下さい。

森博嗣『すべてがFになる』

とてつもなく今更読む。ミステリーってあんまり読まないんだけど、さすがに有名すぎるので読む。
そしてさすがに面白い。内容についてはもはや何も言うことはないけど、とりあえず萌絵ちゃんかわいい。あと四季博士もずいぶんいいキャラしてる。また愛すべきお嬢様キャラが増えてしまったな・・・
S&Mシリーズ、これからもちょくちょく読んでいきたい。