谷崎潤一郎『痴人の愛』

めっちゃおもしろい。その時代の風俗も描いてるところがいいよね。特に大正なんて好きですから。西洋文化が潜り込んできてるあたりの風俗は本当に楽しい。
なんかもう途中だいぶ笑っちゃったからね。あまりにも手玉に取られすぎてて。ジョージがもう惨めすぎるんだけど、なんか人事に思えない。それほどナオミが妖婦すぎるからだ。
もうナオミを初めて家に迎えたときの「お馬さんごっこ」がすべての顛末を暗示しているかのようで怖い。そしてナオミを妻から娼婦として認識が変わってゆく場面はもうちょっと鳥肌モノですよね。
大作家に変態性を描かせるとほんとうに面白いので、これからもそういう作品はちょっと斜めから見た目線で見ていきたいです。

笹本祐一『カーニバル・ナイト』

テンション。これに尽きる。そして和沙結希の妙な存在感。
面白すぎるので早くラスト・レターが読みたいんですが。それ読まないともうまともに感想なんて書けないよ。
文章の手法として、本当に詳しく地名やら固有名詞をしっかり書くとものすごくなんかまともに見えるっていうのは、笹本さんのやり方であるかもしれない。ちょっとクドく感じる人はいるのかもしれないけど、でもやっぱり昔の文豪たちも、やけに風景描写が細かく詳しく、当時の町並みを描き切ってるところとか気に入ってるので、俺は好き。

笹本祐一『ハレーション・ゴースト』

妖精作戦Part2。面白すぎです。
この文化祭描写のハチャメチャさなんかはもう。このシリーズに出てくる高校生共がハイスペックすぎてカッコイイ。なんで大型免許普通に持っとんねん。
沖田くんはかっこ良すぎるのでもうずっと主人公でもいいのかなと思ったけど、やっぱり榊くんの良さも改めて感じれたような。主人公がハイスペックすぎてもだめやな。
にしても、この昔のオタク感、サブカルチャーなんて言葉がなくたって、オタクは普通に色んな文化の知識を持っておったのだ。濃度がおかしい。もちろん、今現在は色んなサブカル(あえて使うけど)文化の数が多すぎるので薄まってる部分もあるのだけど、それだけでは説明のつかない濃度の濃さを感じる。
こんなに面白く感じているんだけど、これがいったい俺の懐古主義的な好みからきているのか、ゆとりオタクどもがこれ読んでどう感じるのか、知りたい所ではある。

小川一水『老ヴォールの惑星』

初めての小川一水。散々本屋では名前見てきたけど。
真面目に色んな知識を蓄えた上でのしっかりしたSFで。でもそのしっかりした上で、今回この短編集だと特に人間と科学SFという感じで、色々考えて読めたのでよかった。
どんどん読まないと・・・まだ本が10冊くらい積んである・・・

ジャック・フィニイ『盗まれた街』

フィニイ。異星人による侵略ものだけど、相手は宇宙植物。生物らしい感情がないところがなんとも不気味だし、その侵略手段も「成り代わり」とだいぶ不気味。
なにより人間の内面だったり感じ方をとても多く描写されていて、人間が好きなのだろうな、と好感が持てる内容。そしてその住む街ももちろん愛すべきものとして描写されているから、読んでいるこっちもそれが侵略されていく様子に気が気でない。
楽しい本でした。

上田早夕里『リリエンタールの末裔』

なんていうか、読んでて画が脳裏に浮かぶ。なぜだか無性に泣きたくなるような、そんな画が。
表題の「リリエンタールの末裔」なんかはもう完全に画が動いてた。あんまり頭に画が浮かぶって意識しないとそこまでないんだけど、もう自然に。
女性作家のSFってやっぱり読んでて楽しい。他のも読むぞー。

スタニスワフ・レム『砂漠の惑星』

ソラリスの陽のもとに』以来のレム。高1くらいに読んで難解過ぎてよくわからないまま読み終えたんだけど。
そのイメージとは違って、一種の冒険物としても読める面があるからだいぶ読みやすかった。発想は本当に秀逸。これはなかなか思いつかない。機械同士の淘汰。
全体に漂う冷たく乾いた雰囲気。訳者の方が素晴らしいっていうのもあるだろうけど、砂漠の惑星とはよく言ったもので。
ソラリスも、改めて読みなおしてみよう。