村上春樹『蛍・納屋を焼く・その他の短編』

村上春樹は隠喩が上手いらしい。
この短編集でも多用されている感じ。それっぽいワードとアンニュイな気分を醸し出すエピソードがあって、それらによって村上ワールドがなんとなく整っていく印象を受ける。「なんかよくわからないけど、上手いこと深いことが書いてあるような気がする」みたいに思わされそうになる。
もしかしたら、そこには何もないのかもしれない。「解釈」をいくらでもできるように、読者のためのキャンバスが用意してあるだけなのかもしれない。ただそういうのを散らばらせられるのもテクニックだしセンスなのかなとも思った。好き嫌いにも繋がるんだろうな。
そういえば「ハルキ文学に出てくる男はいちいち女が寄ってくるしセックスがどうこうとか言う。スカしてるよ!そんなのに共感できないYO!」というなんだ喪男の僻みか、みたいな批評があるらしいことをネットで見たんだけど、たしかにそれはちょっとあるかも。
もうなんか島耕作みたいな。島耕作がアンニュイなことに思考を飛ばし、「やれやれ」と言っていると思えば、たしかにその気持ち分からんでもない。でもそれは僻みでしょう・・・?