高村光太郎『智恵子抄』

「あどけない話」が読みたいがために借りたのだけれど、どうせなのでぜんぶ読む。
詩ばっかりなのかなぁと思っていたら、最後のほうにちょっとした文章や、草野心平回顧録っぽい解説も載っていてそのあたりが読み応えがあって安心。最近はまだ読み方がわかってきたような気もするけども、詩集というものは俺にはちょっと荷が重い。
草野の文章の中で、病気の智恵子を看病中の高村と会ったときのセリフで
「ね、君、僕はどうすればいいの、智恵子が死んだらどうすればいいの?僕は生きられない。(中略)僕の仕事だって、智恵子が死んだら、誰一人見てくれるものがないじゃないの?」
いうのがあって、このあたりはちょっとグッときたような気がする。感情の起伏については割と残念な人生を送ってきました俺に関しては、はたしてこのような気持ちにはなりうるのかとちょっと電車の中で考えてしまってみたり。
智恵子にしたって、鳥と遊ぶ、その鳥の鳴声が「ちぃ、ちぃ、ちぃ」というのはなんとも卑怯な話だ。わざわざ詩に書かれるために出会って、狂って、そして死んでいったような錯覚に陥る。卑怯だ。